しっとりクリーミーで、フルーツに負けない甘さ!

【甘太くん】

最近、スーパーなどでも見かけるようになった大分県のブランド・サツマイモ『甘太くん』。なめらかな口当たりのサツマイモ『紅はるか』の中から、糖度など厳しい基準をクリアして、全農おおいたが流通させているものだけが、『甘太くん』を名乗れる。豊後大野市で『甘太くん』を栽培する田中拓次さん・奈津子さん夫婦を訪ねた。

『甘太くん』は、毎年大分県が提供するウイルスフリー苗を使って栽培し、収穫から40日以上貯蔵した上で、糖度検査にクリアしたサツマイモ。焼き芋にするといわゆる“ねっとり系”で、しっとりとしたクリーミーな口当たりが人気になっている。指定の苗を使うことで、艶のある紅色になり、甘味や食感なども向上するという。そのおいしさをさらに引き上げるのが貯蔵だ。一定の気温と湿度に保たれた貯蔵庫で40日以上寝かせることにより、サツマイモのデンプンが糖に変わり、甘味がグンと増す。2008年にブランド化された。

大分県南部に位置する豊後大野市。ここは隣接する臼杵市と並び、『甘太くん』の栽培が盛んに行われている県内有数の産地だ。温暖な気候と阿蘇山の噴火によって堆積した火山灰土が『甘太くん』の栽培に適しているという。田中さん夫婦は、ここで『甘太くん』を作りはじめて7作目。1町(約1ha)の畑を使って栽培を行っている。「土づくりが大事です。同じ畑で続けて作ると土の力が落ちますので、ローテーションで休ませています」と田中さん。「いい土壌じゃないと形も大きさも味もいい『甘太くん』は育ちませんから」と教えてくれた。

田中さんの畑を訪ねたのは12月中旬。当然、『甘太くん』の収穫は終わっていた。「この時期は育苗の準備をしています。1〜2月にかけて育苗と畑の準備を行います。その際、畑の土の成分分析を大分県に行ってもらい、どの成分を加えて『甘太くん』にとって最適な土にするかアドバイスしてもらいます。その後、4月中旬頃から植え付けを行い、9月下旬〜11月上旬にかけて収穫します」と話す。葉が育つまでは雑草取りが大変らしいが、生い茂ってしまえばその回数も減り、ウイルスフリーの種苗で病気にも強く、比較的育てやすいという。

サツマイモは土の中で育つため、生育具合を目で確認することはできない。「毎回、収穫する時はドキドキですよ」と田中さん。もちろん、今期もおいしい『甘太くん』が育った。「安定しておいしい『甘太くん』を作れるようにしたいですね。育苗や土づくりなどで試したいことがあるので、『甘太くん部会』で情報交換をしていきたいと思います」。今後についての質問に田中さんはこう答えた。妻の奈津子さんは「ご近所のみなさんに配ると喜ばれるのがうれしいですね」と話す。8作目となる来期は1.5haに畑を広げる予定だという。

田中拓次さん・奈津子さん

26歳の頃、託児さんが豊後大野市で就農し、お茶栽培を始める。その後、奈津子さんと結婚し、最盛期がお茶と異なる『甘太くん』栽培に挑戦。