苦味が少なく、生食もできるピーマン
【ピーマン】
昭和の時代、ピーマンは子どもたちの嫌いな野菜のひとつに数えられていた。しかし、最近の八百屋やスーパーに並ぶピーマンは苦味が抑えられ、甘みさえ感じる。そんなピーマンの一大産地が大分県。2022年の生産量は県全体で4500トン以上もあり、夏秋ピーマンの生産量は西日本で第1位の生産量を誇る。今回は大分市南東部でおいしいピーマンを作り続ける甲斐敏資さんを訪ねた。
1年中店頭に並ぶピーマンだが、中南米が原産のため本来の旬は夏の時期。ビタミンCなどの栄養分だけでなく、最近ではそのクセのなさから生食でも人気を集めている。
大分市、臼杵市、豊後大野市などを中心に、県下各地栽培されているピーマン。甲斐さんは大分市南東部に広がるビニールハウス内でピーマンを育てている。そのキャリアは、なんと50年以上。卓越した経験と人望の厚さから、JAおおいたピーマン生産部会の会長も務める。4月下旬から11月までに収穫期を迎えるピーマン。しかし、よりおいしいピーマンを作るために1月から始動する。まずは土壌の成分検査を行い、栽培に適した土づくりからスタートする。「この土づくりが大事」と甲斐さんは話す。
納得のいく土に仕上げた後、3月に定植を行う。それからも甲斐さんの休む暇はない。栽培中は、ビニールハウス内の温度をピーマンにとって最適な25度前後になるよう、1棟1棟ビニールの開け閉めを繰り返す。また、ピーマンに日光が満遍なくあたるよう、剪定作業も定期的に行う。そうする間にも土壌検査を行い、検査結果から与える肥料などを調整して、おいしいピーマンに育てていく。「大変ですけど、わが子を可愛がるようなもんですよ」と甲斐さんは笑う。こうして大切に育てたピーマンがビニールハウスの中でいくつも実っていた。
「今年のピーマンもよく出来ました。緑色が濃く、肉厚で苦味も少ないです。子どもたちにもおいしく食べてもらえると思います。生で食べるとパリパリとした食感もいいですよ」と甲斐さん。納得できるとやっと甲斐さんに休息の時が訪れる。12月の手が休まる時には、趣味の旅行などに出掛け、来年への英気を養う。そしてまた、おいしいピーマンをたくさん育て、私たちに届けてくれる。
甲斐敏資さん
農業大学校を卒業後、21歳からピーマン作りを始める。「おいしいピーマンを作る部会員を増やし、将来につなげていきたい」と話す。米、イチゴも栽培。